クラウディオ・モンテヴェルディ『聖母マリアの夕べの祈り』 Claudio Monteverdi“Vespro della Beata Vergine” ホアン・マヌエル・クィンターナ指揮 グループ『葦』ヴェスプロメモリアルアンサンブル演奏


『聖母マリアの夕べの祈り』の演奏会が終わりました。

指揮のホアン・マヌエル・クィンターナ様、音楽監督の野入志津子様、舞台監督の上村清彦様、共にモンテヴェルディの音楽をつくりあげた奏者の皆様、ご来場いただいた皆様、応援をして下さったたくさんの皆様に感謝申し上げます。


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『聖母マリアの夕べの祈り』演奏会パンフレット
12.Aug.2019 program 2.pdf
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熊本大学教育学部音楽科教授で作曲家の國枝春恵先生がVespro 公演について記事を書いて下さいました。
8月22日の熊本日日新聞25面、芸能欄自由席コーナーです。
國枝先生ありがとうございます😊


クラウディオ・モンテヴェルディ

(1567?-1643)

   「西洋で最も力強く、壮大で、崇高な音楽作品」と指揮者のクィンターナ氏が、また音楽監督の野入氏は「演奏する度いつも不思議な癒しを感じる素晴らしい作品」と語るクラウディオ・モンテヴェルディ作曲『聖母マリアの夕べの祈り』。バロック音楽の幕開けを飾った音楽史上記念すべき作品である。

 

   日本ではその時代は安土・桃山時代にあたり宣教師の渡来、信長や秀吉など時の為政者の政策で東西の文化が初めて熱く交流した衝撃的な時代だった。天正遣欧少年使節団、天草市河浦町にあった大神学校「天草コレジヨ」はその大きな偉業である。音楽についても彼らが持ち帰ったのは楽器のみならずヨーロッパ当代随一の文化から発した音楽や様式だった。それは宣教師またキリスト教に帰依した信徒達によって伝えられ、長い時の経過の後もわらべ歌など今も耳にする音楽として残っていると思われる。日本人の私達がルネサンス・バロック音楽を聴いてどこか懐かしい感情を抱くのも遠い祖先の記憶がそうさせるのではないか。

 

   モンテヴェルディ(1567?-1643)が初めての宗教音楽、カトリック教会での聖務日課の一部である晩課(ヴェスプロ)を元に『聖母マリアの夕べの祈り』を1610年に出版した動機や初演の記録は失われ諸説紛々としている。大筋では宮廷楽長として勤めるマントヴァでの不遇、また彼の革新的な音楽に対する保守的な批評家達からの激しい攻撃、そして疫病による彼の妻また信頼する歌手の相次ぐ逝去、失意の底でヴァチカンまたはヴェネツィアへ新天地を求めたという。本作品はグレゴリオ聖歌を定旋律として用い、カトリック教会の典礼に使用されてきた聖母マリアに関する複数の聖書のテキストや雅歌も含み構成される。作曲当時の諸事情はあっても彼の作品は時を超えて確立されたものであり、その音楽は永遠への願いがこめられた祈りである。

 

  今回の公演にあたり熊本で結成し四十年以上ルネッサンス・バロック音楽の演奏を続けてきたグループ『葦』を中心に、九州はもとより日本国内外から音楽、本作品を愛する人々が共に集い二年の歳月をかけて築き上げてきた。ローカルの力の発揮、まさにこれが私たちの文化です、といえる活動と感じる。自然災害(熊本地震)で苦しめられ傷ついた多くの県民の心を音楽の持つ力で少しでも癒すことが叶い、根底に脈々とある熊本の豊かな文化に支えられた命、底力の確かな発露となることができればと心より願う。


『聖母マリアの夕べの祈り』プロモーションビデオ